「蒟蒻」から世界の「konnyaku」へ!ヘルシー食、グルテンフリー食ブームが牽引する「ワールドワイド蒟蒻」
日本では江戸時代に庶民におなじみの食べ物になり、おでんに田楽にと一般的な「蒟蒻」。日本食がブームとなり様々な日本食が世界に広まっている過程で当然「蒟蒻」も人気に…と思いきやそう簡単にはいかない事情があったようです。
まず一般的な板蒟蒻の「黒くてプリプリした」見た目と食感がアジア諸国の方にも欧米の人々からも「出会ったこともない食感と味!食べ物と認識できない」という反応が多くなんと「デビルズ・タン(悪魔の舌)」というあだ名がつけられたことも。
日本人にはたまらないプリプリとした絶妙な歯ごたえや食感が、「食べ物に思えない」と簡単には受け入れられずに来たのです。
また日本人好みの淡泊な味も「味がない」と捉えられ、97%が水分でカロリーが少ないことも「栄養がないなんて食べる意味があるの?」と散々な評価をされていた時代がありました。
その情勢を変えたのは白いヌードル状の「しらたき」「糸蒟蒻」や、米の形状になった「粒蒟蒻」「タピオカ風蒟蒻」などの「代替食」になる製品の開発・普及と、全世界に流行する「健康ブーム」でした。
「おいしくて健康的」「カロリーが低くて太らない」という世界中の人が求めている「スーパーフード」として、「グルテンフリー」な麺として、「konnyaku」「konjac」「shrataki」は世界の各国で「TOFU」の次に定番人気の日本食材に成長しつつあります。
イタリアで大流行したZEN PASTAの現在
10数年前にイタリアで大流行し、一気に市民権を得た「ZEN PASTA」とは「乾燥しらたき」のこと。
イタリア人男性と結婚されていた石井・シモニーニ・裕子さんのもとに日本から届いた「乾燥しらたき」をヒントに、ご主人が「乾燥しらたき」を日本的なイメージの「禅+PASTA」としてゼンパスタとして輸入販売し大ブームを巻き起こしたことが日本のテレビでも多く紹介され、逆輸入的に日本でも「乾燥しらたき」「乾燥糸こんにゃく」「ZEN PASTA」が注目されるようになりました。
日本でも昔からダイエットの方法としてしらたきを冷やし中華の麺にしたり、ラーメンの代わりにするアイデアはありましたが、スーパーで売っているしらたきは水が入っていて重く持ち帰るのに苦労すること、独特の生臭い「蒟蒻臭」があることなどから、日本ではあくまで「ダイエットしたい人の秘策」でした。
「ZEN PASTA」のようにパスタの代わりとして流行するというのは「蒟蒻」に対する先入観のなかったイタリアならではのことだったと思います。
パスタの年間消費量が日本人の約14.2倍もある、イタリアの人々に受け入れられたのは「蒟蒻」ではなく「カロリーも糖質もほぼない革命的にヘルシーなパスタ」だったのです!
もともと、イタリアはトマトやオリーブオイル、ワインや豊富なシーフード、その土地土地の野菜などをふんだんに使った伝統的な食事が多く、世界の中でも日本同様に長寿で健康意識の高いお国柄。
また、リゾットなど米を食べる文化もあり、刺身と似た「カルパッチョ」、天ぷらと似た「フリット」など、新鮮な素材を活かした料理方法もあり、カロリーが1/25のヘルシーパスタが好まれる土壌があったのかもしれません。
特に太るのを気にしてパスタを食べることができなかった女性から「ZEN PASTA」は「安心して食べられるおしゃなパスタ」として支持率が高く、現在では細い麺状のパスタだけでなく、様々な形のショートパスタも開発され、より多くのイタリア料理でおいしく食べられているそうです。
フランスの「SHIRATAKI」事情
「ファッションと美の国」フランスでは、ここ8年ほど「しらたきダイエット」が流行しているそうで、以前はオーガニックフード専門店や日本食専門店でだけ扱われていた蒟蒻が、町中のスーパーで日常的に販売されているおなじみ食材になりました。
ほんれんそう入りの「タリアテッレ」やこんにゃくを使ったソースで絡めたレトルト「shiratakiパスタ」こんにゃくのとろみを活用した「ヘルシーポタージュスープ」まで幅広い「shirataki」食品がスーパーで扱われており、その多様性はうらやましくなるほど!
レシピ本も多数発行されており、レストランで食事するよりも家庭で手作りの食事を囲むことを大切にするフランスでは、調理が短時間で簡単なことも魅力と感じる人が多く、パスタや麺類の代替え以外にも前菜、メイン、デザートなど様々なレシピを楽しむ人が多いそう。
元々、美食の国「フランス」では日本食レストランもラーメン店も多く、フランス料理の有名シェフたちも日本発の「豆腐」「抹茶」「柚子」「蕎麦」といった食材を取りいれることに熱心なことも、「蒟蒻」「シラタキ」ブームを後押ししているのかもしれません。
また「shirataki」は白く、合わせる食材の色やソースの色を引き立たたせて料理を「おしゃれ」に見せてくれることもパリジェンヌには魅力的に映るようです。
若い時だけでなく生涯現役で自分らしくファッションも恋愛も楽しむフランス女性にとって、体型維持は日本以上に関心の強いテーマ。今後もますますフランスでの「konjac」ブームは拡大しそうです。
アメリカ・カナダ・イギリスで「ミラクル・ヌードル・シラタキ」は大人気
Youtubeで海外のダイエット料理や、ヘルシー料理の動画を見ていると、よくアメリカの方が「shirataki noodle」「miracle noodle」の茹で方や、レシピを紹介しているムービーに遭遇します。
日本から世界に広まった「即席めん」「カップラーメン」が既に全世界でなくてはならない食品になっていますし、日本食もヘルシーイメージで大人気!アメリカやカナダでは糖尿病や肥満に悩む人々が非常に多く、ほぼカロリーゼロで食物繊維が豊富なこんにゃくはダイエットに最適な食材として歓迎され「shirataki」が人気になるのは当然かもしれません。
州によって普及率や人気には差がありそうですが、カリフォルニア・NYなど都市部のスーパーでは「shirataki」コーナーがあることも多く「TOUFU SHIRATAKI」(豆腐しらたき)、「Skinny Noodles」(スキニー=痩せる意味)、一番メジャーな「Miracle Noodles(ミラクル・ヌードル)」など多数の種類があるそうです。
日本の大手食品メーカーが手掛ける「豆乳+しらたき」のミックス麺「TOUFU SHIRATAKI」は絶大な人気があり、「スパゲッティ」「フェットチーネ」「エンジェルヘアー」「マカロニ」など種類も多数で、豆腐と同じくらい主力商品になっているとか。
特にここ数年、一気に広まりを見せている「グルテンフリー」(小麦・麦製品に含まれるたんぱく質=グルテンの含まれない食材)に「shirataki」がマッチしていたこと、様々な人種・宗教・環境の人たちが暮らす多様性の国アメリカで、「ベジタリアン」「ビーガン(厳格なベジタリアン)」向けの食材が普及しやすいことも火付け役となりました。
パスタだけでなくベトナムの「チャプチェ」、タイ料理などの「ビーフン」、中華麺など、様々な国の麺料理が楽しまれているアメリカならではの「shirataki」文化の発展に今後も期待が高まります。
蒟蒻発祥の地「中国」では「魔芋(もーゆー)」と呼ばれています。
中国では蒟蒻はBC300年ころ中国では、四川省峨眉山に住む道士が蒟蒻芋から「魔芋」を作る方法を開発したとされていて「魔芋」「魔芋豆腐」と呼ばれています。中国でも「魔芋」を食べる地域は限定されていて中国では貴州省、雲南省、四川省、湖北省西部及び陝西省南部に多く、中でも四川盆地が特に多いようです。
市場などで蒟蒻芋や自家製の手作り「摩芋」を出されていることも多く、屋台料理でおでんのような「茹で摩芋」「ステーキ風摩芋」「鶏と摩芋の煮込み」などが売られていて、鍋料理の具材としても使われているそうです。
しかし伝来した先の日本では様々な料理に欠かせない食べ物として発展し、今では世界中にヘルシー食として人気の「蒟蒻」が、発祥の地の中国ではあまり一般的な食べ物ではないのは不思議ですね。
その代わり、世界中で拡大する「shirataki」「konjac noodle」の原材料としての「蒟蒻」の生産は年々拡大し、今や世界一の「蒟蒻原料」生産国に躍り出て、「蒟蒻米」「蒟蒻麺」のとして国内での人気が高まりつつあるそうで、食の欧米化が進んでいると言われる中国でもダイエッターに大人気の食べ物になるかもしれません。
日本人に大人気の「台湾」は実は「蒟蒻先進国」でした!
2019年の流行語大賞トップ10にも輝いた「タピる」は今年爆発的にヒットした「タピオカミルクティー」から発生した言葉。
町中で行列ができていると見れば以前はラーメン店でしたが、今年は行列の先にあるのは新しい「タピオカ店」。しかも台湾で大人気で日本に進出したお店が多いのが印象的でした。
正に老いも若きもタピオカに夢中!その原動力になったのはここ15年ほど右肩上がりに盛り上がり続けている「台湾旅行」「台湾フード」に他なりません。
日本に進出した台湾発のタピオカ専門店やスイーツ店に行くと、トッピングの中に「蒟蒻」があります。これは日本に進出したお店だから特別に取りいれられているのではなく、台湾にも独自の「蒟蒻」料理文化があり様々な料理やスイーツに使われているからなのです。
台湾国内での流行ワードに「QQ」というものがあるのですが、これは噛んだ時に「キュッキュ」というようなプリプリした食感のことを指しており、「タピオカ」や「蒟蒻」「寒天」「ゼリー」などを使用した「QQ」フードが大人気です。
これらの食材は単品で使われるだけでなく、たとえばタピオカやゼリーを製品化する際に「蒟蒻」をミックスしてより絶妙な「プルプル」「キュッキュ」とした楽しい食感が楽しめる食品がたくさん!
日本人旅行者にも大人気の「豆花」や「ぜんざい」などの台湾スイーツ店で、緑豆や小豆、タピオカ、フルーツ、ナッツなど好みのトッピングを乗せる際に、ラインナップに並んでいるのが細かいダイス状、もしくはボール状になった「蒟蒻」。
欧米諸国が後発的に「ヘルシーな代替食」としての「蒟蒻」や「しらたき」を取りいれたのとは一線を画し、日本人と同様その「独特の食感」「味がなく様々な食べ方ができるところ」を愛し、独自の「蒟蒻フード」世界を築いているところにとても親近感が沸きますね!
また、台湾独特の「蒟蒻食文化」として近年急成長しているのが「素食(スーシー)」。いわゆる「ベジタリアン食」です。
台湾は日本より厳格に仏教・道教などを信仰する層や、動物愛護、環境保護の精神、健康志向などからもベジタリアンが多く全人口の10%以上、7~8人に1人が「素食主義=べジタリアン」で、この数字はアジアではインドの31%に次ぎ、2番目に高い比率です。
台湾素食は肉食・魚食だけでなく、五葷(ネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、タマネギ)を一切使わず、動物由来の油、卵、乳製品、出汁にも肉や魚介類を一切使いません。
町中でごく一般的に「台湾素食」のレストランがあり、100種類以上の「素食」料理だけが並ぶビュッフェレストランも人気で、もちろん味もお肉や魚を使った普通の料理と変わらないハイレベルさ。
その「素食」の素材として活用されているのが「蒟蒻」。豆乳、豆腐、湯葉、おからなどや、野菜・海藻由来の食材と合わせて「べジミート」「べジシーフード」が作られ、見た目も味も食感もそっくり!「素食」だけの回転寿司もあります。
日本でもスモークサーモン風やレバ刺風などの蒟蒻が手に入りますが、その上を行くものがたくさんあります。また台湾土産でおなじみの「パイナップルケーキ」や「ヌガー」などにも「蒟蒻粉」をを入れてモチモチ感を出したものも多くあり、「蒟蒻チップス」は細切り、厚切り、多種類のフレーバーで選ぶのに迷うほどのバリエーションがあるんです。
ぜひ台湾旅行をされた際には、「素食」のお店やスーパーで日本にはない「蒟蒻素食製品」を楽しんでみてくださいね。