冷凍庫に保存しておいた食材に、いつの間にか冷凍やけが起きていることがあります。変色したり縮んだりした食材を、泣く泣く捨てたという経験は多くの人にあるでしょう。保存するつもりだった食材を捨てることになるのは、経済的にも大きなロスと言えます。
そもそも、冷凍やけとはどんなメカニズムで起きてしまうのでしょうか。見た目からして劣化した冷凍やけの食材は、食べても大丈夫なのでしょうか。実は、冷凍やけは4つのポイントに気を付けるだけで防ぐことができるのです。ここでは、冷凍やけの基礎知識や冷凍やけを防ぐポイントについて解説します。さらに、冷凍やけしてしまった食材は食べても大丈夫なのか、どう解凍すればおいしく食べられるのかについても紹介していきます。
目次
冷凍やけの基礎知識
冷凍した食材が冷凍やけを起こしてしまうのは「昇華(しょうか)」と「酸化」という2つの現象が関係しているためです。「昇華」とは、固体が液体になることを経ずに気体に変化する現象を指します。たとえば、製氷器で作った氷を冷凍庫に長期間放置しておくと、氷は小さくなっていってしまいます。これは、放置した氷に昇華が起こり、氷の水分が蒸気として飛んでしまったためです。
氷が溶けていないのに蒸気になってしまうのは不思議に感じるかもしれませんが、ドライアイスをイメージするとわかりやすいでしょう。冷凍保存した食材に昇華が起こるのは、食材の中の凍った水分がドライアイスのように気体となって出ていったからなのです。
食材に含まれる水分が気体となって出ていくと、水分のあった部分はスペースとなり、そこには空気が入ることになります。すると、内部で食材の持つたんぱく質や脂肪分が空気と触れ合って酸化し、変色したり縮んだりして品質が落ちてしまいます。これが冷凍やけの仕組みです。凍ったまま乾いてしまうことから、フリーズドライ現象とも呼ばれることがあります。一部では、冷凍庫の食材に霜がつくことを「冷凍やけ」と呼ぶこともあります。
しかし、食材に霜がつくのは気化した水分がまた固体に戻るためで、冷凍やけの結果として起こる現象です。あくまで冷凍やけとは、食材内の水分が気化した結果そのスペースに空気が入り、食材が酸化してしまうことを指しています。
冷凍やけした食材は食べても大丈夫?
冷凍焼けした食品を食べることは、基本的には体に大きな害はないといわれています。冷凍やけは、あくまで酸化による品質の低下であり、腐敗ではないからです。
しかし、酸化した脂質を食べ続けることは、体内で活性酸素が発生する原因のひとつといわれています。この活性酸素は、増えすぎると肌荒れや動脈硬化など、体の老化を促進するとされる成分です。すぐに大きな害はないとしても、冷凍焼けした食材を食べ続けることは望ましくないと言えるでしょう。
食材の水分が抜けた状態の冷凍やけは、その水分を補給してあげることで、ある程度味わいを冷凍やけ前に戻すことができます。しかし、酸化してしまったたんぱく質や脂肪分を酸化前に戻すことはできません。味わいを多少ケアできたとしても、完全に復活させる方法はないのです。食材は、冷凍やけしないように適切に冷凍することが重要と言えるでしょう。
また、冷凍した食材をどう解凍するかも非常に重要です。適切に冷凍したとしても、電子レンジなどで急速に解凍すると、食材の細胞組織が破壊されドリップと呼ばれる液体が流れ出てしまいます。このドリップには旨味成分が多く含まれているため、急速に解凍した食材は旨味が抜け、味わいが落ちてしまうのです。冷凍したときの新鮮な味わいを最大限に引き出すためには、適切に冷凍することと、時間をかけてしっかりと解凍することの両方に気を付けなければなりません。
冷凍やけした食材の理想的な解凍方法を紹介!
もし、冷凍した食材が冷凍やけしてしまった場合でも、解凍方法に気をつけることで食材へのダメージを抑えることができます。重要なのは、旨味成分を含んだ液体である「ドリップ」をなるべく出さないように解凍することです。
ドリップを出さないように解凍するには、食材全体の温度を均一にすることがポイントになります。もし、早く解凍したいからと食材を常温の場所に置いておくと、凍った内側と常温にさらされる外側の温度差が大きくなり、ドリップが流れ出てしまいます。それだけでなく、長く常温になる食材の外側に雑菌が繁殖しやすくなり、食中毒の原因となる可能性もあるでしょう。
食材を適切に解凍するには、主に冷蔵庫解凍と氷水解凍の2つの方法があります。冷蔵庫内や氷水の中の温度は、理想的な解凍温度といわれる1℃~5℃です。この低温の場所でゆっくりと解凍することで、食材の温度は均一に近くなり、ドリップの流出を防ぐことができます。冷蔵庫解凍は電子レンジでの解凍や常温解凍より時間がかかるため、食材を使いたい日の前日に冷蔵庫へ移しておくとよいでしょう。
急いでいるときは、ビニール袋に入れた食材を氷水の中に浸す「氷水解凍」を行います。水は空気より熱伝導率が高いため、解凍時間を大幅に短縮することができるのです。氷水解凍を行う際は1℃~5℃の温度を保てるよう、溶けた氷は補充しましょう。氷が溶けきった水に食材を浸しておくと常温保存と同じ温度になってしまうため、長時間放置しないよう注意が必要です。
食材の冷凍やけを防ぐ共通ポイント
どんな食材を冷凍するにしても、冷凍やけを防ぐ共通のポイントがあります。1つ目は、空気に触れさせないことです。食材をぴったりと包まず、空気に触れさせたまま冷凍すると、乾燥して品質が落ちてしまいます。また、空気があることで食材の水分の逃げ道ができてしまい、なおかつ空気が水分のあったスペースに入り込みやすくもなるのです。理想は、真空もしくは真空に近い状態で冷凍し、食材を空気に触れさせないことと言えます。
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2つ目は、長期間冷凍せず、なるべく早く食べきることです。食材に含まれる水分が昇華される冷凍やけは、時間を置くほどに進んでいってしまいます。
3つ目は、冷凍庫をしっかりと低温に保つことです。冷凍庫を頻繁に開け閉めしたり、温かいままのものを入れたりすると、冷凍された食材は温度変化にさらされます。これによって食材に含まれる水分は溶けたり凍ったりを繰り返して失われやすくなり、冷凍やけが促進されてしまうのです。冷凍庫の温度が高すぎると、食材が霜だらけになってしまうことがあります。これは食材に含まれる水分が失われ、食材の外で再度凍った結果起きる現象です。食材に霜がついていたら、冷凍やけしている可能性が高いでしょう。
4つ目のポイントは、食材を急速冷凍することです。食材を冷凍すると水分が凍って結晶となります。この結晶は、ゆっくり凍らせると大きくなり、急速に凍らせると小さくなるという性質があります。結晶が大きくなると食材の細胞を傷つけて水分が失われやすくなるだけでなく、入り込む空気の通り道も大きくなってしまうので、より冷凍やけしやすくなるのです。食材を薄く処理する、小分けにする、保冷剤を乗せるなどの工夫で冷凍までの時間を短縮することができるでしょう。
お肉は砂糖水につけて冷凍やけを防ぐ
冷凍やけやドリップの流出を防ぐためには、食材に合わせた冷凍や解凍のポイントを押さえることも重要です。お肉を冷凍するポイントは、大きく分けて「素早く冷凍すること」「空気に触れさせないこと」「水分の気化を防ぐこと」の3つがあります。
食材の中の水分は、冷凍すると氷の結晶になり、この結晶が食材の細胞を傷つけることで解凍した際にドリップが出やすくなってしまいます。しかし、急速に冷凍するとこの結晶を小さくすることができるため、細胞の破壊も少なくなるのです。お肉を冷凍する際には、薄く平らになるよう小分けにすると、早く冷凍することができるでしょう。また、小分けにしてぴったりと包むことで食材が空気と触れるのを防ぎ、冷凍やけの原因である酸化を抑えることができるのです。
さらに、お肉を砂糖水につけて冷凍するのも冷凍やけを防ぐひとつの方法です。砂糖は水分と結びつきやすい性質があるので、食材に含まれる水分が気化してしまうのを防いでくれます。水1リットルにつき1gの砂糖を入れた砂糖水であれば、お肉に甘い下味がついてしまうこともありません。おいしく冷凍できる期間を延ばすことも可能なため、お肉をたくさん購入したときなどに便利な方法です。解凍の際は、冷蔵庫に入れて解凍しましょう。冷蔵庫なら低温で、なおかつ時間をかけて解凍できるため、お肉の温度変化が穏やかでドリップが出にくくなります。
お魚の冷凍やけを防ぐうえで大切なのは下処理
お魚をおいしく冷凍、解凍する際のポイントは「下処理をすること」「空気に触れさせないこと」「低温で解凍すること」の3つです。もし、冷凍するお魚に頭やエラ、内臓がついていたら下処理をしてきれいに取り除きましょう。これらの部分は傷みやすく、解凍した際の臭みの原因になります。下処理をして切り身の状態にすれば、傷みにくいだけでなく密閉しやすい形にもなるので、空気に触れさせないように冷凍することができるでしょう。食材の厚みも薄くなるので早く凍り、おいしい冷凍の条件である「急速冷凍」により近くなります。
お魚に醤油やみりんなどで下味をつけて冷凍すると、より冷凍やけを防ぐことができます。調味液につけたまま冷凍することで、食材の水分が気化してしまうのを防ぎ、酸化を抑えることができるのです。また、冷凍すると魚に含まれる水分が結晶になることで食材の細胞が傷つきます。そのため、調味液につけたまま冷凍すると、味がよりしみ込んでおいしくなるのもメリットです。少ない調味液でよく味がしみるので、減塩効果も期待できます。
解凍の際はお肉と同じように、低温でゆっくりと解凍するのがポイントです。冷蔵庫解凍なら、冷凍状態との温度差も少なく、食材全体を均一の温度に保てるのでおいしく解凍することができるでしょう。もし時間を短縮したければ、ビニール袋に入れて氷水につける「氷水解凍」もおいしく解凍できる方法です。
冷凍保存はうまく使えば便利な保存技術
冷凍やけを防ぎ、おいしく食材を冷凍するには知識とコツが必要です。しかし、冷凍保存はうまく使えば非常に便利な保存技術と言えるでしょう。冷蔵庫に長く放置した食品はどんどん味が落ちてしまいますが、冷凍保存なら劣化を防いで新鮮なままに近い味わいを保つことができます。
野菜なども、生のまま冷蔵庫で長期間保存するより、茹でて冷凍したほうが栄養素は多く残るともいわれています。冷蔵庫よりもはるかに長く保存することができるため、大きな容量の食材を購入しても無駄にならず、これは経済的にも大きなメリットです。
冷凍すると水分が凍り、細胞を壊すという性質を利用すれば、食材の中まで下味をしみ込ませることができます。この方法なら、少ない調味料で味がしみるので減塩効果もあり、しっかりと味がつくため物足りなさも感じません。また、下味がついているので調理時間を短縮することもできます。朝冷蔵庫に移して解凍しておけば、そのまま焼くだけ、または調味液ごと煮るだけなどでおかずが一品できるでしょう。このように、冷凍保存は保存方法として便利なだけでなく、健康やライフスタイルに役立つ賢い調理方法とも言えるのです。
おいしさを保つためにも冷凍やけを防ごう
食材が冷凍やけしてしまうと、変色したり縮んだりなどで見た目が劣化するだけでなく、酸化することで味も悪くなってしまいます。それだけでなく、酸化した脂肪は長期間に渡って摂取すると体への悪影響があるとされる成分です。冷凍保存が便利で賢い方法になるか、味わいや健康に悪い影響のある方法になるかは、上手に冷凍できるかにかかっているとも言えるでしょう。
冷凍やけとは、食材の乾燥と酸化です。この2つを防ぐには、食材を空気に触れさせないことが最も重要なポイントと言えます。食材を密閉する際にはできるだけ空気を抜き、ぴったりと真空状態にして保存するのが理想です。
家庭で真空状態のパックを作るには、保存袋や保存機の中にある空気をストローで吸うという方法もあります。しかし、お肉やお魚のパックの空気を吸うのは多くの場合抵抗を感じますし、完全な真空にはなりません。そういったときには、機械で真空パックを作ってくれる真空パック機を利用すると便利です。
お肉やお魚などの食材だけでなく、煮物なども真空パックにできるので、食べ残してしまいそうなおかずもサッと冷凍保存することができます。冷凍やけを防ぐことができれば、食生活はより効率的になると言えます。上手な冷凍保存をマスターして、食材を賢くやりくりしていきましょう。
暮らしの幸便
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